いつまでもアメリカン。http://foreveramerican.blog89.fc2.com/ --- 支配(R18) --- -- 1 -- 立ち並ぶビルの向こうから、潮風が吹いてくる。 そんなアンバランスな環境が、駅を降りてすぐに感じられる街。 毎日毎日、この歩道橋を通って会社へ向かっているが 憂鬱な時、その風に背中を押されることも多い。 会社に向かう途中で歩道橋を降りると、小さな公園がある。 どこもかしこも禁煙になってしまっている昨今。 灰皿が据え付けてあるこの場所は、まさに一息つくのにはもってこいの場所だ。 会社からは少し歩くが、会社のビルの喫煙室は非常に狭く、居心地が悪いので 気分転換にここまで来ることもある。 公園には、何匹か野良猫が住み着いているらしく 隅に建っている石碑の台座の上で、のんびりと寝ている光景をよく目にする。 「係長、ここのヘッドの位置なんですけど」 部下の望月が、図面を手に質問にやって来る。 転職組である彼は、現在研修中。 前職は住宅メーカーの営業だったらしい。 ほぼ畑違いとも言える防災機器メーカーへの転職だが、なかなか勉強熱心で、飲み込みも早い。 「この建物は、耐火?」 「そうです。だから、包含円は2.3でいいんですよね?」 「大丈夫だね。ああ、ここって、天井下がってるんだっけ?」 「あ、そうか。それだと……」 うちの会社は、防災機器全般を取り扱っているが、部署は取り扱う機器によって異なっている。 オレのいる部署は主としてスプリンクラーとそれに付随する機器を扱っていて 望月は、その基本を勉強中。 毎年、ころころ変わる消防法とのにらめっこになる仕事ではあるが やりがいのある仕事だと、思っている。 ちなみに、今のオレは係長ということになってはいるが 歴史も長く、大きな会社だけあって、役職は完全に年功序列。 課長までは誰でもなれると揶揄されているほどだ。 特に、就職氷河期と呼ばれたオレの代は、極端に採用人数が少なかった為 全員部長にまでなれるんじゃないかと、笑い話になっている。 「急に建築図が変更になっちゃって……」 金曜日の夕方。 本当なら、やって来る週末に思いを馳せる時間なのだろうが 電話の向こうの設備屋さんは、それどころではなさそうだった。 「来週明けに消防協議があるんで、それまでに何とかなりませんか」 この時間じゃ、もうCADの手を確保できない。 しかし、聞いてみると、どうやらそれほど大きな変更ではないらしい。 図面修正は先方でやってくれると言うことだし どうせ、明日も出るつもりだったので、引き受けることにした。 「では、今晩中に差し替えた図面をお送りしておきますので」 「ええ、お願いします」 「こちらこそ、本当にすみません。宜しくお願いいたします」 休日出勤の朝。 いつもと同じ時間に出ても、あの窒息しそうなラッシュは無く 街の雰囲気も、全く変わる。 本来なら、憂鬱なものなのかも知れないが、休日の方が気が楽なことも多い。 客先からの電話も来ないし、オフィスには殆ど人もいないから 自分のペースで作業を進めることが出来る。 途中、秋葉原で京浜東北線に乗り換える。 電車を降りて、ふと向かいのホームを見ると、見知った顔がいた。 望月だった。 オールでもしたのだろうか、スーツを着たままだ。 普段の彼からはちょっと想像できなかったが、プライベートなことは殆ど話さないから そういうこともあるんだろう、と勝手に納得した。 その時、不意に彼と目が合った。 一瞬驚いたような目をした後、小さく会釈をする。 隣を歩いていた、やはりスーツを着た男が、彼の仕草に気がついて、こちらを見る。 ずいぶんと若い男だった。 まだ大学を出てまもないんじゃないかと思うくらいだ。 程なく、望月は若い男の腰に手を回すように先を促し、去っていった。 -- 2 -- 秋葉原で見た光景は、俺にとって違和感だらけのものだった。 スーツを着たままで疲れた表情をした望月、隣を歩く若い男、腰を手にまわす仕草。 かと言って、本人に直接聞くのも如何なものかと思う。 そんなことも、送られてきていた修正図面を見て、記憶の片隅に追いやられる。 防火区画が大きく変更になっているのだ。 用途が変更されている部屋まであり、結局、チェック作業は夕方までかかってしまった。 資料をメールで送り、設備屋さんへ電話をかける。 「すみません、よく見ると大幅な変更でしたね……」 「一応この修正で大丈夫だと思いますので」 「助かります」 声からして、大分お疲れのご様子だ。 「機械設備の方も、結構修正あるんじゃないですか?」 「ええ、申請も近いんで、この土日が踏ん張りどころです」 お互いを労いつつ、電話を切った。 予定していた仕事は、まだ手付かずだった。 今日やって行くか、明日も出るか、月曜日に回すか。 しばらく考えて、一番初めの案に落ち着く。 早めの夕飯をとりに、駅前まで出る。 ほぼオフィス街であるこの街は、やはり週末の人出も少ない。 やっている店も少ないので、駅の中のうどん屋で軽く食事をした。 会社へ戻る道すがら、いつもの公園に立ち寄り、煙草に火をつける。 頭上の水銀灯がチカチカと点滅していて、周囲は明暗を繰り返していた。 猫はそれでもお構い無しと、ベンチの上で丸まっている。 新幹線がすぐ側を通り過ぎる頃、俺は煙草を消し、会社に戻る。 残務処理もあらかた終わり、時計は10時を回っていた。 後は、望月の研修報告書に目を通すだけだな、と書類に手を伸ばす。 研修は3ヶ月ほどだから、あと半月もすれば正式な配属となるはずだ。 期間が終わっても、すぐに独り立ちできるわけでもないから しばらくは面倒を見ることになるのだろう。 「何だ、桜井。まだいたのか」 こんな状況で声をかけられ、思わず腰が浮く。 振り向くと、同期の小澤が作業服姿で立っていた。 ヤツも名目は係長だが、仕事内容は俺と同様、ヒラと何も変わらない。 「こんな時間まで現場か?」 「ああ、もう最悪だよ」 そう言って、ヘルメットがぶら下がったカバンを無造作に机に置く。 聞くと、申請上は居室扱いされていなかった部屋が、居室として作り変えられており 補助散水栓で対応する部分も、意匠上の点から、と言う理由だけで位置が変えられ 警戒できない部分が出てきてしまったとのこと。 「それ、どうしたんだ?」 「どうもこうも。来週消防検査だって言うし、結局ヘッド付けさせた」 滅多に無い事例ではないが、担当現場でそれをやられたら、俺も同じようにぼやくだろう。 「まったく、ああ言う事は検査後にやれっての」 「検査後の方がやっかいだろ。結局、何かあった時に責任取るのはうちなんだから」 それから半月ほど過ぎた、月初。 望月は、正式に俺の部下として、部署に配属された。 幸いなことに、それほど物件も立て込んでいない時期だったので 俺の担当している現場や、消防協議に連れて行き、流れを覚えてもらうことにした。 図面じゃなく、現場で覚えて来いと言うのが、会社の流儀。 俺が新人の時も、そうやって鍛えられた。 あの時ほど、厳しく指導することは、俺には出来ないが。 「そう言えば、係長は千葉の方にお住まいなんですか?」 物件の現場調査の帰りのこと。 すっかり忘れていた光景を、その質問で思い出した。 「ああいや、小岩なんだよ」 「ちょっと遠くないですか?」 「就職した時から住んでてね。居心地が良いから、そのまま」 会社までの通勤時間は、決して短くは無いけれど 仕事モードから気持ちを切り替える時間としては、丁度いいと思っている。 「望月君はどの辺りなんだっけ?」 「僕は川崎です」 「じゃあ、会社には一本で来れるんだね」 川崎?秋葉原は逆方向じゃないか。 疑念が大きくなる。 けれど、それを解消する術は無かった。 -- 3 -- ある金曜日の夕方、望月の歓迎会が部署で執り行われた。 背も高く、顔も端正な彼は、部内の女性陣からとても温かい歓迎を受けていたようで 一次会が終わる頃には、若干疲れた表情を見せていた。 二次会でも行くかという流れになった時、俺の携帯が鳴った。 出ると、相手は客先の設計事務所。 設備に供給する電気容量が知りたいとのことだったが 電話口で答えられるような内容ではなかった。 「ちょっと……俺、会社戻るわ」 「はぁ?部下の歓迎会だろうが。まだまだ行くぞ」 「歓迎会は終わっただろ。後は自由解散だ」 ぶつくさ言ってくる同僚をたしなめつつ、望月に声をかける。 「あんまり無理しなくて良いからな」 「僕は大丈夫ですんで。お疲れ様です」 飲み会の余韻を引きずりながら、会社に戻り、資料をチェックする。 どうやら提出した図面から数値が抜けていたらしく、完全にうちのミス。 早急な対応が必要だった。 「申し訳ありません、お手数かけまして」 「いえいえ、こんな時間に回答いただいて、助かります」 「今後とも、宜しくお願いいたします」 ふぅ、と一息つく。 「まだ、いらっしゃいましたね」 振り向くと、望月が立っていた。 「何かお手伝いできればと思って」 「ああ、ありがとう。でも、もう終わったよ」 「そうでしたか」 部署の奴らは、どうやら主役抜きで楽しんでいるらしい。 会社からの帰り道。 もう大分遅い時間ということで、歩道橋を歩く人影も少ない。 「一服していきませんか?」 「煙草吸うんだっけ?」 「ええ、たまに」 そう言う望月と共に、公園へ降りる。 相変わらず水銀灯は点滅していて、その向こうに先客がいるのが分かった。 近づいていくと、その顔に見覚えがある。 あの時、望月と一緒にいた男だった。 「彼、覚えてます?」 どういうべきなのか迷っている内に、望月は畳み掛けるように言う。 「あの時、見ましたよね。彼、僕のセフレなんです」 は?セフレ?いや、あいつもお前も男だろ? 混乱しながら、怪訝な顔で振り返ると、望月は不気味な笑みを浮かべていた。 俺に疑問を呈する時間は無かった。 表情から怯んでいると察したのか、望月は俺の首に腕を回し、締め付けて来る。 苦しさで、声は出なかった。 そのまま、木立の中へ引きずり込まれる。 大きな木を背にし、背後には望月が、正面には、望月の "彼" が立つ。 「手錠と足かせ、つけちゃって」 望月の声が、頭の後ろからする。 新幹線が通り過ぎていく音が、やたら遠くに聞こえる。 気を失わないのが不思議なくらい、心の中を恐怖が支配していた。 腕の力が弱まる替わりに、俺の口は望月の手で塞がれる。 「あんまり抵抗しないんですね」 何処か可笑しそうに、そう言う。 男二人に挟まれ、手も足も動かせない状況で、どう抵抗できるというのだろう。 力にそれほど自信があるわけでもない。 「係長、僕のものになって下さいよ」 何を言っているのか、分からなかった。 俺は端から男には興味も無いし、今まで周りにそう言った人間もいなかった。 彼は俺の部下で、俺は彼の上司。 それ以上の関係は、何も無かったはずだし、求めていなかったはずだ。 なのに、何故、こうなる? これからされるであろう恐ろしい予感の中で、俺はますます混乱する。 「って、いきなりそんなこと言っても無駄だと思うんで」 いつもとは明らかに違う口調だった。 「先に、快感を味わってもらって、それから、また聞きますね」 そう言うと、正面に立った彼がかがみこみ、俺のベルトを外し始めた。 本気か? しきりに首を振ると、望月の腕に力が入る。 「あんまり暴れると、歯が当たって怪我しますよ」 -- 4 -- 「相当仕込んだんでね、上手いでしょう?」 夜の公園に似つかわしくない音が響き、それは、時折通る電車の音にかき消される。 額ににじんだ汗が、首筋まで流れる感覚と共に 彼によって与えられる快感が、脳に滲んでいくように感じられた。 望月は、片方の手で俺のネクタイを解き、ワイシャツのボタンを外していく。 中に着ているTシャツの中に手を入れ、胸から腹の辺りをまさぐり 首筋の辺りを、唇で愛撫し始める。 俺が何かに小さく反応する度、男たちからは笑みがこぼれる。 快楽に悶える様が、そんなに楽しいのか。 屈辱で一杯になりつつ、その責めに抗えなくなってきていたのは確かだった。 「イキたくなったら、イっちゃっていいですよ」 望月の言葉どおり、俺はそろそろ限界だった。 モノを咥える彼は、俺を妖しげな上目遣いで見ている。 俺と目が合うと、それが合図になったかのように彼の動きは段々と早くなり 時を置かず、頂点に達した。 精液を地面に吐き捨てる彼を、呆然としたままで見下ろす。 何やってるんだ、俺も、こいつらも。 「まだまだですよ、係長」 背後からの望月の声。 もう十分だろ、そんな気持ちで一杯だった。 望月の手が、背中から腰へ下がる。 何処へ向かっているのか、容易に想像できた。 必死に首を振り、抵抗するが、逆に楽しませただけのようだった。 「初めてでしょうから。いきなりセックスは強要しませんよ」 手は腰から割れ目をなぞり、穴へ差し掛かる。 「豆ローターあるっけ?」 「あるよ」 「じゃ、それにローションつけて」 AVでしか聞かないような言葉を、さも日常のように話すのか。 30年以上生きてきて、知らない世界があることを、ここに来て実感する。 ローションが付けられた小さな卵形の物体は、街の灯りを受けて輝いていた。 「力抜いてくださいね」 そう言うや否や、異物が身体の中に押し込まれる。 感覚的には、座薬だな、そんなことを冷静に考える。 彼は俺の尻を両方から押さえつけながら、下腹部を愛撫し始めた。 さっきまでの余韻が残っている体は、どうにも敏感になっているようで 反応する度、無意識のうちにローターを締め付けてしまう。 「係長にも気に入っていただけると良いんですけど」 ふざけた口調でそう言い、望月はリモコンのスイッチを入れる。 身体が跳ねた。 言い様の無い感覚だった。 快感とは違った、けれど腰骨に響く振動が、体中を刺激してくる。 「どうですか?初めてのアナルは」 どうかと聞かれて、どう答えれば喜ぶのか。 「ちゃんと反応してくれてるみたいですね」 望月は、下に目線を落として、笑う。 俺のモノは、再び勃ち始めていた。 望月が絶品だというフェラと、初めての場所で暴れるローター。 2つの刺激が、延々と与えられる。 口を塞ぐ手は外され、替わりに2本の手が俺の身体をまさぐる。 声を上げる気力は、すっかり無くなっていた。 荒い息遣いだけが、辺りに響く。 「気持ちいいでしょう?係長」 耳元で、そう囁かれる。 言われるまでも無く、今までに味わったことの無い快感だった。 でも、それはこの異常な状況がそうさせているだけだと思いたい。 ここで答えれば、俺の中に残ったわずかな理性すら、失ってしまいそうで怖かった。 歯を食いしばる俺を見て、ローターの強度を上げる。 「もう一個、入れてもいいんですよ?」 わずかに首を横に振る。 「じゃ、素直に言って下さい」 蔑む様な口調が癪に障った。 それでも、耐えられない。 「……気持ち、いい」 俺は、部下に、堕とされた。 -- 5 -- 二度目の絶頂の後、望月は俺の顎を掴み、キスをしてきた。 唇が触れた後、口の中に舌が入ってくる。 抵抗する気力も無く、しばらくは、されるがままだった。 やがて俺はその意図を汲み、舌を絡め合う。 「そろそろ、僕も気持ち良くして下さいよ」 すぐ後ろに立つ望月のモノが、俺の腰の辺りに当たる。 それは、無理だ。 嫌悪と恐怖で、失いかけた理性が戻る。 「そんな怖い顔、しないで下さい」 いやらしい笑みを浮かべ、望月は再びリモコンを操作する。 思わず、腰が引ける。 「そこはこれで良さそうですから。口で、お願いしますね」 望月の前に、跪く。 手錠と足かせは外された。 見上げると、勝ち誇った表情が目に入る。 背後になった "彼" の手が、肩にかかった。 「オレのも、お願いしますよ。手でいいですから」 子供のようなトーンの高い声は、否が応にも若さを感じさせる。 それが俺の屈辱感を増幅させた。 「ああ、あと」 彼は、俺の腰を撫でるとそのまま手を下に伸ばし、異物をもう一つ入れてきた。 上ずった声が出る。 「ローション無くても入っちゃいますね」 無邪気にも思える彼の声が、耳元で響く。 口には望月のモノを含み、手では彼のモノを扱く。 中に入れられたローターは、二人がそれぞれ持つリモコンによって 互い違いの刺激を加え続けて来る。 堪らず動きを止めると、言葉で嘲弄される。 もう、状況を言い訳にすることは出来なかった。 その時間は、それほど長くは無かったと思う。 先に彼が達し、望月が続く。 二人の精液を顔に浴び、気持ちの悪い感触を味合わされる。 目や鼻、口の中にも入り、酷く不味いものが、喉の奥まで刺激してきた。 顔を伏せて咽る俺の顔を、しゃがみ込んだ望月が覗き込む。 「お疲れ様でした、係長」 表情は、それまでと変わらない、嘲り笑うようなものだったのに 俺の中では、何故だか優しいものに感じられていた。 何かに救いを求めたい一心だったのかも知れない。 「じゃ、オレ、彼氏と約束あるんで」 俺たちを見下ろしながら、身支度を整えつつ、彼は言った。 望月は立ち上がると、ごく自然にキスをする。 「また、連絡するよ。彼氏によろしく」 彼は乾いた笑顔で、俺に笑いかける。 「楽しかったですよ、係長」 絶え間なく続く振動で、腰に力が入らなかった。 望月は再び屈み込み、俺と視線を合わせる。 「僕らは、もう少し楽しみましょうか」 そう言って、俺のモノを軽く撫でる。 震えが来るほどの快感。 散々与えられたアナルへの刺激が、一所に集中して反応してしまっていた。 「まだイっちゃダメですよ。僕が良いって言うまで、我慢してくださいね」 目の前の木に、掴まり立ちの格好になる。 後から望月が抱きしめるように、体中を優しく触ってくる。 「ここも、感じるでしょう?」 首筋から鎖骨を辿り、乳首を弄ぶ。 声が出るのを抑えられない。 俺の反応を確かめるように、指で転がし、摘んでくる。 絶頂に達しそうになるのを、必死で我慢するしかなかった。 手が下に伸びてくる。 しかし、それは求めている場所ではなく、その周辺を動く。 「桜井さん」 焦燥感が募る。 「僕のものになってくれますね?」 一度拒絶した問いを、再度投げかけられる。 「そしたら、もっと、おかしくなるまで気持ち良くしてあげますよ」 焦らされる身体に刺激され、何かが、弾けた。 俺は力なく、首を縦に振る。 ふっ、と笑うのが聞こえた。 「嬉しいです」 手は俺のモノを捕らえ、激しく扱かれる。 「……どうぞ」 部下の許可を得る、そんな惨めな感情はどうでも良かった。 快楽に全てを任せ、俺は果てた。 俺の中から抜かれたローターは、草むらの中へ放り投げられた。 手錠や足かせは、望月のカバンに納まる。 俺は、公園の水飲み場で頭から水を被り、全てを洗い流す。 酔いが覚めるように、気持ちは落ち着いて来たのに、身体の熱は収まらない。 不自然に皺がよってしまったスーツ。 顎や下半身の、初めて感じる痛み。 この出来事が夢じゃないことを実感させられる。 側に立っている望月に視線を移すと、彼はまっすぐに俺を見ていた。 望月は俺の腕を取り、抱きすくめ、キスをしてきた。 こいつは俺に何を求めている? 俺はこれから、こいつとどうなって行くんだ? 答えは分からない。 けれど、少なくとも、今の俺は快楽に支配されているだけ、それは明白だった。 Copyright 2010 まべちがわ All Rights Reserved.